常口住宅販売では、地主さんでは無く、いわゆる不動産投資家、サラリーマン大家さんがメインターゲットでした。
また、建築エリアも札幌市内ではなく地方が多かったのです。
これには理由がありました。
恐らくこの当時(平成18年)から、札幌の入居率が良くないことがはっきりとしてきました。
当時は札幌で投資物件を進めている会社も沢山ありましたが、私達は不動産会社であったにもかかわらず、建築しか頭にありませんでした。
もしこの頃に札幌でRC物件を建てていたとしたら、今頃中古物件としての売却ができ、クライアントさんも喜んでいたでしょうが、当時の部署は建てるのが仕事で、仲介は別部署に任せるしかありませんでした。
要するに、全部を担当しているのであれば、建築→中古売却→中古購入→新築購入等の仕事のサイクルが描けたのですが、「仲介は仕事ではない=思考にない」という事になっており、新築で持ちきるという思考のみでした。
恐らくどの会社の営業も自分の守備範囲の知識と意識しかないのが現実です。
常口住宅販売に勤務して順調に仕事をしながら2年が過ぎた頃のお話です。
当時室蘭は家賃が高く、入居率もよく、広告料が掛からないと聞き、常口室蘭店の店長にお会いしに行きました。
常口はその殆どが直営なのですが、室蘭がフランチャイズ店で地元の山地不動産企画さんが経営していました。
そこで、手始めに東室蘭の「モルエ東室蘭」という複合商業施設のすぐ向かいに3棟16世帯のアパートを建築しました。
この当時は土地もかなり安く、12%位の利回りが回ったのです。
そこで数棟を建築したのですがその中の一棟が私が持つことになった室蘭市寿町の木造アパートでした。
持つことになったと書いていますが、スタートはまさに「持つことになった」のです。
当時の常口でのアパート営業の流れはこうです。
- 土地情報を問い合わせ等で探す。
- 土地に概算プランを載せて、数字チェックをして、収支が合ったら直ぐにお客さんに提案。
- 直ちに仲介会社に、自分のところでお客さんを付けると言って、情報をストップしてもらう。
- お客さんがOKと言ったら、直ぐに買い付け証明を提出する。その時には融資条件付きとして、1ヶ月後位を
契約締結の期限とする。 - お客様の融資の事前承認や事前診査の内容で土地を契約する。融資がダメになったら、最悪その後にお客さ
んを変更する。 - 建築請負工事を締結する
- 確認申請を取得する
- 土地の決裁(全額支払)を行なう。この時に銀行の手形貸付で着工金を出すケースもあります。
- 建築工事を開始。
- 完成時に建築工事代金を、銀行と金消契約(金銭消費契約)で出して回収する。
このような流れで、新築のアパート企画は進み、お客様にお渡ししていたのでした。
この流れを見て頂くと分かるように、金消契約は完成ギリギリで行なうのです。
当然事前の内容でOKが出ていることを前提に進むのですが、最後の金消契約が完了しないと最終金の融資実行にならないという、リスクのある契約なのです。
私が「持つことになった」室蘭市寿町のアパートですが、まさにこの流れでお客様がついており、もう引渡しというタイミングで事件は起きました。
「団信(団体信用生命保険)が承認されません!!」・・・・こんな連絡が金融機関から連絡が来たのです。
「へっ!!なに?どういうこと??」
当時、このお客様はアパートを数棟持っていた方ですが、独身で保証人がいない状況でした。
しかも遠方の為に某地銀数行でしか、融資対象にならず、その地銀はどれも団信が必須の組み立てとなっていました。
お酒が好きな人で、なんと肝数値で引っかかり、団信NGという冗談のような回答が来たのでした。
引渡しが既に2週間後に迫る時期で、他のお客さんにご紹介とも思いましたが、間に合いません。
私の不動産の師匠に相談したところ、「自分で買えばいいでしょ」と言われて、初めて自分がその物件を持つという選択肢が出てきたのであります。
アパートを何棟も人に薦めておいて、今まで自分では持つ気も、その準備もしていませんでしたし、持てるとも思っていませんでした。
まあ、不動産営業なんて皆こんな感じです。
自分で持つことを考え出した時から、急に汗が出てくるのです(笑)
本当にこの物件持って大丈夫??かと。
そこから急激に自分の見える景色が変わったのです。
なんとか無事に??信用金庫で融資を取付け、引渡時期を少し過ぎてからなんとか融資承認が出ました。
融資がNGになったお客様から、不動産取得税やその他の経費を上乗せして、土地を購入する契約を締結しました。
融資が通った要因は、私及び会社がいつもこの金融機関に融資を持ち込み融資先のお客様をご紹介していたのと、年収が普通よりは高かった事です。
不動産営業は当時は物凄く歩合率が高く、逆に売上がないと給料が10万円なんて人もいました。
だいたい会社に対して上げた粗利の30%位が歩合になって、更に年俸分もありました。
前年度の成績で約4000万円の粗利をあげていた私はその30%+年俸分がありました。
今考えると凄い歩合だったものです。
有名な伝説としては、違うアパート販売会社の担当営業の年収が8000万円あったとか言われています。
それだけアパート販売は業者にとって儲かったという事です。
この物件は消費税の還付もしました。
その時に調べていて、あたったのが「浦田健」さんです。
当時は自販機設置での消費税還付スキームが出始めていて、その情報を発信していたのが浦田さんでした。
こちらも引渡し2週間前からの準備でしたので、本当にギリギリで還付を受けることが出来たのでした。