賃貸物件で関わりのある消防法ですが、あまり馴染みのないオーナー様もいるのではないでしょうか。消防法では、消防設備の設置義務や点検などのルールが規定されています。避難設備の不備や点検を怠ると刑事責任を問われる可能性もあります。そこで今回は、消防法の基礎知識について解説します。
□消防法とは?
消防法は、火災から国民の生命、身体及び財産を守り、火災又は地震等の災害による被害を最小限に抑えるためにルールを定めています。全46条から成る法律で、消防の設備や消化活動、火災調査、救急業務など、基本的な事項が規定されています。
□消防設備点検に関する条文
*消防法第17条第1項
消防設備の設置や点検については、消防法第17条に規定されています。
「学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの関係者は、政令で定める消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設では、消火、避難その他の消防の活動のために必要とされる性能を有するように、政令で定める技術上の基準に従つて、設置し、及び維持しなければならない」と規定されています。
防火対象物とは、消防法施行令別表第一に掲げられる建築物などの火災予防行政の主たる対象となるものを指します。防火対象物は、用途によって「特定防火対象物」と「非特定防火対象物」に分けられます。
特定防火対象物は、不特定多数の人が出入りする建築物など、火災発生時に指定されます。
具体的には、劇場等、公会堂等、キャバレー、カフェ、ナイトクラブ、性風俗営業店舗等、遊技場、カラオケ等、料理店等、百貨店等、旅館等、病院等、自力避難困難者入所施設等、老人福祉、支援施設等、幼稚園等、特殊浴場等などです。
非特定防火対象物は、特定防火対象物に該当しない防火対象物です。
具体的には、共同住宅等、学校等、図書館等、一般浴場等、駅舎等、神社等、工場等、スタジオ等、駐車場等、倉庫、事務所等などです。
*消防法第17条第3項の3
消防法17条3項の3では、消防用設備等の点検・報告について定められています。点検は「機器点検」と「総合点検」に分けられています。
機器点検は、半年に1回に行い、消防設備の適切な設置や損傷の有無など、外観目視と簡易な操作により、設備の不良を見つける点検です。
総合点検は、1年に1回に行い、消防用設備の全部または一部を作動させ、正常であるか総合的な機能をチェックします。
消防設備点検については、 特定防火対象物は1年1回、非特定防火対象物は3年に1回の報告義務があります。報告先は、建物を管轄する消防署又は出張所へ提出します。報告を怠った場合は、立入検査の指導や30万円以下の罰金または拘留の罰則があるため、注意が必要です。
□まとめ
今回は、消防法の基礎知識について解説しました。賃貸物件では、消防法の規定により、消防用設備等の点検・報告義務があります。報告を怠った場合は、罰則が定められているため注意しましょう。