物件を持つ不動産オーナー様にとって、火災保険や地震保険は万が一のときのためにとても大切なものです。保険会社やプランによって保険料は異なりますが、いずれにしても毎年一定の金額がかかってきます。地震保険の場合、条件を満たすことで保険料が控除されることはご存知でしたでしょうか。今回は、地震保険料控除のしくみについて解説いたします。
□地震保険料控除
*地震保険料控除とは?
地震保険料控除とは、1年間に支払った地震保険料や保険期間に応じて、一定の金額が課税所得金額から控除されるしくみのことです。このしくみを活用して年末調整や確定申告を行うと、所得税や住民税の支払いが安くなります。
このしくみが新設されたのは2006年度のことで、地震保険の加入者数を高めることを目的としています。2006年度の税制改正により「損害保険料控除」が廃止され、「地震保険料控除」が新設されました。この改正により、控除枠がより大きく変更になっています。
*控除金額の算出
では、具体的にどれくらいの所得税、住民税が安くなるのでしょうか?
算出するには、「地震保険料を確認する」「課税所得金額を確認する」「税額を算出する」の3ステップを踏む必要があります。例えば、地震保険の契約期間が5年間で、保険料が20万円の場合でシミュレーションしてみます。
まず地震保険料は、保険会社から送られてくる書類の「地震保険年額保険料」にて確認いただけます。この書類は、毎年10月ごろに保険会社から登録している住所に郵送されますので、保管しておきましょう。
年額の保険料を「地震保険料控除表(所得税)」に当てはめてみると、控除額がどれくらいなのかが把握できます。5年間で20万円の保険料の場合は、年額保険料が4万円なので、控除額が「支払金額」の4万円となります。
次に、課税所得金額を確認して、そこから控除額4万円を差し引いた金額を算出しましょう。例えば、課税所得金額が500万円の場合は、496万円となります。最後に、「所得税の速算表」と照らし合わせて計算することで、税額が算出されます。
所得税税額 :496万円×20%-427,500円 = 564,500円
一方、控除が適用されなかった場合の税額は、以下になります。
所得税税額:500万円×20%-427,500円 = 572,500円
つまり、地震保険料控除により安くなる所得税は 572,500円 – 564,500円 = 8,000円ということになります。
※参照:『国税庁 地震保険料控除』
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1145.htm
住民税の場合も同様に、「地震保険料控除表(住民税)」を使って算出できます。
※参照:『札幌市 税額の算出方法』
https://www.city.sapporo.jp/citytax/syurui/shiminzei/kojin_zeigaku.html
□旧長期損害保険に係る経過措置
2006年度に新設された「地震保険料控除」ですが、税制改正以前に締結していた地震保険についてはどうなるのかと気になる方もいらっしゃるでしょう。税制改正以前の旧長期損害保険料に関しては、一定の条件を満たすことで経過措置の対象となります。
経過措置の内容としては、旧長期損害保険料に対して地震保険料控除が適用されます。ただし、控除額は1万5千円に上限が定められている点に注意が必要です。
では、どのような契約が旧長期損害保険に係る経過措置の対象になるのでしょうか。
1つ目は、2006年12月31日までに締結した契約であることです。保険期間や共済期間の始まり時期が、2007年1月1日以後のものは対象外となります。2つ目は、満期返戻金のあるもので保険期間または共済期間が10年以上であることです。3つ目は、2007年1月1日以後にその損害保険契約などの変更をしていないものであることです。
場合によっては、ひとつの契約が「地震保険料控除」と「旧長期損害保険料控除」の両方の対象になるケースがあります。その場合は、いずれか片方のみを自由に選択して適用させることが可能です。加えて、1年ごとに選択を切り替えることもできます。
□地震保険料控除の対象となる条件
地震保険料控除の対象は、以下の通りです。
・保険の対象が居住用の住宅であること
・震保険控除を受ける本人
・保険契約者と生計を一にする配偶者か親族
店舗など併用している住宅の場合は、居住用部分のみ地震保険料控除の対象になります。また、賃貸物件に住んでいるケースでは、家財に地震保険をかけていれば地震保険料控除を受けることが可能です。
□まとめ
今回は、地震保険料控除についてご紹介しました。不動産オーナー様は万が一に備えて地震保険に加入されていることと思います。しかし、中には保険料が控除されることをご存知ない方もいらっしゃいますので、まずはご自分の保険加入時期や内容についてぜひ確認してみてください。控除が適用されれば、所得税や住民税が軽減されます。
保険や計算方法についてご不明点ございましたら、お気軽にご相談ください。
また、確定申告される際は、必要書類などを最寄りの税務署までお問い合わせください。